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傷病名低酸素脳症による眼と肢体の障害
年金の種類障害厚生年金
等級1級
請求方法
年齢・性別男性

 TAさんの眼は、目の前が明るいのか暗いのか(明暗弁)しか判りません。手足もほとんど動かせません。障害年金の障害等級に当てはめれば失明ということと、もう一方の肢体機能の全喪失のどちらか一方だけでも、優に1級に該当する重症です。

 誰に言われるでもなく障害年金の受給を思い立った奥さんは年金事務所へ出向き、職員に教わりながら、何とか障害厚生年金の請求書を作って提出しました。しかし県事務センター(日本年金機構の実務機関)は年金を出そうとしないのです。

 その前に、TAさんは一体何が原因でそんな重度障害を負ったのかを説明しなければいけませんね。

 TAさんはあるとき突然心肺停止状態に陥り、脳に酸素が充分供給されない「低酸素脳症」になったことで、大脳皮質が大きなダメージを受けたのです。

 そのために、眼球や視神経や手足には何の異常もないのに、脳がものを見る力を失い、脳が身体を動かせなくなってしまったのです。

 ではさらに、TAさんの心肺停止はなぜ起こったのでしょうか。

 障害厚生年金を審査する県事務センターは、阿部さんを最初に診察し蘇生させた医師が作った「受診状況等説明書」の傷病名欄に「気管支喘息重積発作」と書かれてあることを鵜呑みにして、心肺停止の直接の要因は喘息の発作だと断定しました。

 詳しいことは省略しますが、このことが障害厚生年金を出さないことの根拠にされていましたから、心肺停止の原因が喘息発作ではなかったことが証明されない限り、TAさんの障害厚生年金を受給できないことになりました。

 奥さんの訴えを受けた社会保険労務士は、何よりも心肺停止が気管支喘息の発作で起こったということに強い疑問を抱きました。

 奥さんに聞いてみると、その歯科治療とはインプラント術だということでしたが、歯科治療とはいえ虫歯の処理などとは桁違いで、手術にも匹敵するインプラント術だったからには、麻酔剤が欠かせないはずだと気付きました。

 歯科医が治療に使う麻酔剤が「キシロカイン」だということはすぐに分かりました。

 さらに調べているうちに、キシロカインは、患者の体質と状況によっては、喘息発作とは比較にならない、死に至ることもある激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー・ショック」を起こすことがある、ということも医学書で知りました。

 上の証明書を書いた医師にこのことを告げて意見を求めたところ、彼はアナフィラキシー・ショックだった可能性もあることをしぶしぶ認めました。それをその医師の意見書として書いてもらい、さらにアナフィラキシー・ショックを発症するメカニズムを申立書にまとめ、調査中に得た医学資料などを添付して、あらためて県事務センターに請求しました。

 さすがに今度は、日本年金機構も障害厚生年金の支給を認めました。

 以上のことは、さまざまなことを示唆していますが、今後の障害年金の裁定請求や不服申し立てに生かされれば何よりだと思います。

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